ここ数年,月に一度程度の割合でオーケストラを聴きに行っている.
佐渡裕さんが監督をしている兵庫県立芸術文化センター交響楽団の定期演奏会だ.
この楽団は,音大を卒業してプロの演奏家になる手前の人が所属するアカデミー的楽団である.
任期は三年なのだそうだ.
プロになる手前だとは行っても,音大出だけあってもちろんプロ並みである.
佐渡裕さんは,ここで経験を積ませることで音楽家として世界に羽ばたかせようとしているようだ.
若い人々で構成されているから若干音が堅いのだけれども,
経験を積ませるという観点から様々な曲を演奏させている.
おかげでこちらも予期せぬ曲との出会いがたくさんあり,
毎回とても楽しく聞かせてもらっている.
ただこれだけ立て続けに聞いていると,いつ何の曲を聴いたのか忘れてしまう.
毎回聴きながら,感動しながら,もしかしたらこの曲もいつか忘れてしまうのだろうかと,
ふと考えてしまうことが最近増えてきた.
音楽の世界は華やかではあるけれども,同時に,そういった儚さも兼ね備えている.
さて,美術はどうかというと,作品自体は割とその場にとどまっていて,
壊れたり劣化さえしなければ,いつでも作品と再会できるのである.
これは,音楽との大きな違いだと実感した.
ただ,少し理系的にこの両者をとらえてみると,
周波数という共通点があることに気がついた.
音は,振動する波が空間を伝わって耳に届き,鼓膜を振るわせ脳に刺激を与える.
波には,周波数というある一定期間の間にどれだけ振動するか,ということで特徴付けられる.
周波数が異なれば聞こえる音の高さが違うのである.
この一定期間の単位が「時間」であるのが音で,厳密に音を言い表すと「時間的周波数」で特徴付けられるのである.
また,いろんな周波数が混ざることを調和(もしくは不調和もある)という.
そして,どんな音でも細かく分析すると,いろんな周波数が混在した状態なのである.
では,美術はどうか.
空間に横たわっている美術作品は時間的に振動はしていない.
これだけ聞くと周波数とは無縁の存在に感じるが,
実は,空間も周波数の混在した状態ととらえることができるのだ.
例えば,窓にあるブラインドを思い浮かべてもらいたい.
ある一定の長さの中に繰り返して同じパターンが出てくることに気がつくと思う.
この繰り返しこそが「空間的な」波の周波数に相当するのだ.
目の細かいブラインドと目の粗いブラインドは「空間的周波数」が違うのだ.
そして,音と同じように,すべての見える物体は,
いろんな空間的周波数を組み合わせた結果としてとらえることができる.
これは,大学の数学を勉強したことがある人ならば一度は聞いたことのある「フーリエ変換」という数学的操作で解析できるのだ.
フーリエ変換を使いこなせると,時間的現象を周波数で理解できるし,空間にある物体も周波数で理解できる.
その場から消えてなくなる「音楽」と
その場から消えにくい 「美術」が
「周波数」というフィールドで結びつく
なかなか興味深いことだ.
0 件のコメント:
コメントを投稿